こんにちは。
いつも「薬局あるある話」をお読みくださり、ありがとうございます。mediLab広報・調剤補助C子です。
さて「あるある話」によく登場する「調剤補助」について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。皆様の調剤薬局にもこのような職務に就いているスタッフさんはいますか?調剤補助とは、調剤事務でも入力スタッフでもなく、一言で言うと「調剤業務」の一部をサポートする職務です。最近少しずつ目にするようになってきたファーマシーテクニシャンも同様の意味で使われています。
2019年4月、厚生労働省による通達により、それまで国内ではグレーゾーンとされてきた非薬剤師による調剤業務の一部を担う専門員として確立されたファーマシーテクニシャン。以来、全国各地の調剤薬局において採用枠が徐々に広がりつつあります。実はわたくし調剤補助C子も、勤務先薬局におけるファーマシーテクニシャン第1号のうちの一人なんですよ。慢性的な人手不足が続く薬局業界において、ファーマシーテクニシャン登場により、薬剤師はその分生み出された時間を有効活用し、患者様への丁寧な服薬説明や在宅訪問へと、より多く向き合えるようになることで、薬局としての医療貢献度の高まりも期待されています。いわば薬剤師の対物業務から対人業務への転換において、大きな鍵を握っているのがファーマシーテクニシャンなのです。一方、国家資格などの明確な規定が存在せず、無資格でも就業できる中、働き方や学ぶ姿勢、意欲次第では、医薬品のみに留まらず薬局業務全般に関する知識の蓄積や深まりと共に、ファーマシーテクニシャンとしての専門性も高めていくことができます。正しい知識と鋭い観察力を備えることで、多忙な薬剤師をベストタイミングで過不足なく手助けできてこそ、ファーマシーテクニシャンとしてのスペシャリストと言えるでしょう。
もう一つ、薬剤師をサポートする傍らファーマシーテクニシャンだからこそできるのは「患者様に寄り添う」こと。特に出荷調整中の薬が多い昨今、処方箋片手にあちこちの調剤薬局を探し回っては調剤を断られる患者様も多くお見掛けするたび、胸が痛みます。必要なお薬を求めて来局される患者様を前にして「お薬がないため調剤できません」ではなく「お薬がある薬局をでき得る限り探し、ご案内する」姿勢をもちたいものです。多忙な薬剤師に代わってできそうなこと、患者様の立場に立って想像し、「どうすればお薬と共に安心を届けられるか」という視点のもと動くことができるのも、ファーマシーテクニシャンならではと考えています。
「ファーマシーテクニシャンに興味がある」「ファーマシーテクニシャンって難しそうだけれど、薬局未経験でもできるの?」と思っている方には、ぜひ挑戦していただきたい職務の一つです。そしてもしファーマシーテクニシャンとして既にご活躍中で、「薬局業務も好きだけれど、mediLabのような考え方・働き方にも興味がある・共感する」という方、もちろん大歓迎です。もしそのような方がいらしたら是非、 X(旧Twitter) / Instagram / 公式LINEなどを通じお気軽にメッセージお寄せください。私自身、調剤薬局にて6年間ファーマシーテクニシャンとして薬局現場事情に接し培ってきた経験は、いま現在mediLab広報という新たなポジションで大いに活かされ、mediLabが目指すプロダクト実現に向け、薬局現場の生の声や業界事情を開発チームに伝えるなど、調剤補助C子として社内外に向けた発信へとつながっています。当コラム「ファーマシーテクニシャンって何?」も、そうした発信の一環として読み進めていただけると幸いです。まずは《初心者編》からどうぞ。
【ファーマシーテクニシャンって何? ~ 日々こんなことしています ~ 】
★初心者編《最初はこれだけで手一杯》
●処方箋内容を正確に読み解く
●不足薬があれば調達法も検討
●隙間時間にコツコツ作業(予製の作成から医薬品発注・納品まで)
●分包機、調剤器具の清掃片付け
●極めたいなら貪欲に。1枚でも多くの処方箋にトライ!
★上級者・スペシャリスト目指す編《慣れてきたら、こんなこともできてさらに楽しい》
●入力スタッフのサポート(メーカー、在庫、加算など)
●採用薬ごとの処方数量傾向の把握
●医薬品、採用薬メーカーの在庫管理
●医薬品の期限管理(棚卸前の準備)
●薬歴作成の下書き
●患者様ごとの特徴パターンを把握(いつもこの時間帯に来局、待つのを厭わない、いったん処方箋を置いて退出、郵送希望が多いetc)
●薬剤師の思考・業務へのこだわりを把握(ファーマシーテクニシャンをどの程度信頼しているか/どこまでの業務を任せたいと考えているかetc)
●近隣薬局の薬剤師と親しくなる
薬局勤務未経験の私が、ファーマシーテクニシャンに就いたきっかけ・経緯について、より詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。ロング版もあります。
執筆:mediLab広報・調剤補助C子<薬局あるある話>
処方箋内容を正確に読み解く
~ GE可否・薬品名・用法・用量・日数 ~
調剤薬局での第一歩は、まず患者様から処方箋をお預かりすること。この処方箋がないと、患者様からどんなに「お薬が欲しい」と言われても用意できません。総合病院やクリニックから処方された処方箋記載のお薬を必要量すべて用意し、患者様のお手元にお渡しするまでの一連の流れを「調剤」と呼びます。ファーマシーテクニシャンが行っても良いとされるのは「調剤」の一部(=ピッキング)であり、ピッキング後の鑑査~投薬は薬剤師のみしかできない行為とされています。患者様をなるべくお待たせせず、薬剤師が迅速にスムーズに鑑査・投薬できるようお手伝いするのが、ファーマシーテクニシャンの役割でしょう。求められるのは正確さとスピード、ピッキング領域においてはまずこれが第一です。ファーマシーテクニシャンは薬剤師資格がなくてもできる仕事ですが、正確でスピーディーなピッキングを実現するには、医薬品名(先発/後発)や存在する規格も随時覚えていく必要があり、覚えていればいるほど、自局の採用薬について知っていれば知っているほど、ファーマシーテクニシャンとしての専門性はもちろん高まります。さらに採用薬はどんどん増えていく一方なので、常に学習継続する努力も必要です。処方箋を見た瞬間、ファーマシーテクニシャンはできる限り素早く、以下アクションが求められます。
【処方箋受け取り後、まず確認したいポイント】
●在庫があるか/出荷調整中の薬が含まれていないか
●ジェネリック可か/処方通りか
●何の医薬品/どのメーカー/どの規格 を選ぶか
●同一処方の複数枚処方箋がないか(詳しくは後述)
●予製はあるか
→ あるなら、実際の処方と予製に相違はないか?
●半割の必要性はあるか
→ 半割予製を使う/薬剤師に半割依頼する
●軟膏混ぜ、シロップ計量、粉砕、一包化などはあるか
→ あれば、早めに薬剤師に声掛け
【必須ではないが、慣れてきて余裕があれば確認したいポイント】
●用法・用量に違和感ないか
●疑義照会の必要性はないか
→ ありそうなら、早めに薬剤師に声掛け
患者様のために確実な調剤を目指して~ 出荷調整による不足薬があれば、調達法も検討 ~
少し具体的に処方箋をみていきましょう。たとえば、
【般】カルボシステイン錠500㎎ 1日 3錠 毎食後 6日分
の処方がきたら、<3錠×6日分=18錠>をシンプルにピッキングして終了ですが、もし「カルボシステイン錠500㎎は出荷調整中。250㎎の規格しか在庫がない」状況だったら?ここでピッキングすべきは、カルボシステイン錠250㎎を<3錠×2倍×6日分=36錠>となります。さらに先発希望であれば、カルボシステイン錠の先発:ムコダイン錠250㎎で同用量分ピッキングしなくてはなりません。もちろんムコダイン錠自体の在庫有無も確認、在庫薄またはゼロの場合は不足薬をどう調達すべきか対策を考えます。卸への入荷確認とあわせ、グループ内他店舗から移動可能なお薬であるなら移動依頼を行い、処方内容によってはTonari SoSなどを活用し、在庫がある近隣薬局へ患者様ご紹介、患者様にとって必要な薬を確実にお手元に届ける策を講じていくのもファーマシーテクニシャン職務の一つです。一見、処方箋を元に機械的に動いているだけのように見えるかもしれませんが、調剤中は一つのアクションを起こすにあたり、想像力や決断力もあわせて求められるのがファーマシーテクニシャンであり、腕の見せ所と言えるでしょう。
難しい処方箋や調剤時の不明点は、薬剤師としっかりコミュニケーション
時には脳内変換が求められる、ちょっとややこしい処方箋に出会うこともあります。たとえば規格の選択や用量計算が複雑なドパコール配合錠の半錠処方あるいは1日1錠を朝夕2回で服用という処方では、採用薬に1/2規格が存在すればそちらの規格をピッキング、存在しない場合は半割を行うなど、採用薬在庫に応じた判断が求められます。中には半割に適さない医薬品もあり、この点も注意が必要です。ファーマシーテクニシャンになりたての頃は、医薬品のありかを突き止めるだけでも精一杯であり、規格ごとの医薬品在庫の把握や半割可否の判断はややハードル高めの内容なので、わからない時は自己判断せず、薬剤師にしっかりと確認していきます。鑑査・投薬中の薬剤師に質問するのは勇気がいるものですが、質問しないと先に進めないので、わからない状態を放置したまま調剤に遅れが生じることだけは避けましょう。たとえ鑑査中でも「いま話しかけて大丈夫ですか?」の一声を添えて話しかけるタイミングやコツを少しずつ掴んでいくと、薬剤師とのコミュニケーションもスムーズになってきます。
患者様来局が途絶えない限り、次々と処方箋が持ち込まれるたび、入力スタッフは入力を、ファーマシーテクニシャンはどんどん調剤を進めていきます。少し慣れてくると入力を待たずしても、スタッフが入力している背後から処方箋内容をチラ見し、とにかく1秒でも1剤でも早く調剤を進めておくことがコツです。慣れるまでは、もちろん入力が全て完了してから調剤に着手する形で構いませんが、1枚あたりの薬剤数も処方箋枚数も多いケースがあるので、「どうすれば、いかに時短で調剤できるか」を常に意識しつつピッキングを進めることが、その後の鑑査・投薬に大きな影響を与えます。ちなみに私は計算機を使用することは殆どなく、ほぼ暗算で必要錠数や包数をピッキングしています。慣れてくると包数算出のコツなども掴めてくるので、計算機を使用するより暗算の方がむしろ楽な場合もあるのです。ツムラ漢方が良い例ですね。また外用の処方箋は用量記載の形式であるため、軟膏や点眼液であれば何本必要なのか、細粒であれば何包必要なのか、ピッキング時にサッと算出しなくてはなりません。チューブ1本あたりのg用量、1包あたりのg用量なども頭に入れておくと、よりスピーディーな調剤へとつながっていくので、是非少しずつ覚えていきたいものですね。
急いでいる時に少し注意したいのは、慌てていきなりピッキングし始めないこと。時には91日分と7日分など、処方日数ごとに同一処方箋が複数に分かれていることもあるため、まずはザっと処方箋に目を通すようにしましょう。一包化か内服かを事前に把握しておくことも重要です。一包化の場合、なるべくバラ錠を使ってピッキングする、一包化に適さない薬剤が含まれていないか確認するといったことも求められてきます。さらに慣れてくると、処方箋を見て「一包化だけど、これは便秘薬だから内服かな」と見当をつけ、患者様に確認しに行ったりすることも。この辺りは追ってまた<上級者編>で述べますね。
隙間時間を利用して予製作り。発注から納品まで積極的な関わりを
患者様来局が一瞬でも途絶え、今すぐピッキングすべき処方箋が手元になくても、調剤薬局ではボーっとする時間は皆無です。よく出る処方に備え、たとえばダイフェン配合錠やプレドニゾロン錠、ビソプロロールフマル錠の半割予製を準備、定期的に来局される患者様向けに、前回処方に基づいた次回処方予定分を準備・調剤しておくのもファーマシーテクニシャンとして欠かせない業務の一つです。これらは「予製」と呼ばれ、この予製を行うのと行わないのとでは、思わぬ混雑時や一度に大量の処方箋を受け取ってしまった時などの精神的安堵感が全く違ってきます。次回来局予定者のために必要と思われる医薬品が不足しないよう、予め準備・確保しておくという意味でも、この予製の意味合いは大きく、また結果的に患者様待ち時間の短縮にもつながります。
ピッキングに伴い、薬局から出ていった医薬品については卸への発注も日々欠かせません。ファーマシーテクニシャンになりたての頃は、何をどれくらい発注すべきか判断しづらいかもしれませんが、業務をこなしていくうちに、自局で何の薬がどのくらいの数量出ていっているのか把握できるようになってきます。また卸から納品があった時点で、自ら棚や引き出しに納めていくことで、医薬品のありかも自然と覚えられるようになるため、納品作業にも積極的に関わることをおすすめします。他にも隙間時間にやるべきこと、やれることはたくさんあります。プリンターの薬袋や軟膏壷の補充、不足薬の梱包、発送準備など・・・周りを見渡し、自ら積極的に関わることで、ファーマシーテクニシャンとしてはもちろん薬局スタッフとしても、一つでも多くの薬局業務が身に付くに違いありません。
分包機や軟膏板など調剤器具は清潔に~ 薬剤師のスムーズな導線づくりを心掛け、調剤室全体に目配り ~
一包化や軟膏・クリーム混合、錠剤粉砕といった調剤後は、使用済み調剤器具をきれいに片付け、のちのちの調剤で再び使用出番がやってきた時に備え、常に清潔に保つのもファーマシーテクニシャンの大切な仕事の一つです。調剤棚前にクリームでベタベタの軟膏板やパレットがいつまでも残っていたら・・・いざ別の調剤に取り掛かろうと思っても邪魔になり、スピーディーにいかないですよね。「どうすれば、薬剤師・ファーマシーテクニシャンがスムーズに動けるか」という目線の元、よりスムーズな導線づくりに向け、調剤室内を整えておきます。そしてようやく1日の終わり、閉局時には分包機の掃除も丁寧に行います。粉砕した錠剤の破片や粉が残ったままだと、他の医薬品と混じってしまいますからね。そのまま捨てられた医薬品箱を一つ一つ潰したり清拭綿を補充したり、引き出しの中身を整理しピッキングしやすいよう工夫したり・・・どれも大きな仕事とは言えませんが、スピーディーかつ正確な調剤を行うためには、日頃からの環境整備がとても重要なのです。
以上、ファーマシーテクニシャン<初級者編>についてお届けしましたが、いかがでしたでしょうか。これらが業務の全てではなく、またもちろん調剤薬局の規模や立地、取り扱う処方箋内容やスタッフ構成によって、業務内容の幅に多少の差異はあることでしょう。私の場合、薬局勤務未経験でありながら、会社としてファーマシーテクニシャン制度導入という機運の中、ありがたいことに第1号として採用頂くというご縁に恵まれました。とはいえ前例がないということは、手本とする先輩も存在しないため、入職したての頃はひたすらドキドキしながら処方箋と向き合う毎日でした。総合病院の門前薬局という特質から、受け取る処方箋の診療科も幅広く、数多くの医薬品、処方箋パターンに触れ、結果的に医薬品知識や薬局業務をより多く吸収できたように思います。ファーマシーテクニシャン職を極めたいなら、とにかく貪欲に1枚でも多くの処方箋と向き合うこと。薬の名前、規格、メーカーも数多い中、業務時間中だけでは吸収しきれないことも多いので、自主学習を工夫するなどもおすすめです。ちなみに私はこのような方法学び、モチベーションを高めました。次回<上級者編>では、ピッキング領域を超えて、ファーマシーテクニシャンとして専門性をより高めていくための心構えについて触れてまいりますので、こちらもどうぞお楽しみに。