
新人薬剤師とAI
過日、薬学部生の集団が店舗見学に来たときのこと。普段どおりの“調剤薬局の日常”を見てもらうのが第一の目的らしく、待っている患者さん達で込み合っている待合室の様子もお構いなし、やや私語も交じりながらの学生見学会の進行に、ベテランスタッフ達は正直ヒヤヒヤ、モヤモヤしていたそう。そんなとき、追い打ちをかけるように飛び込んできた本社人事担当による説明に、思わず耳を疑ったそうです。「入力は、OCRがやってくれるので大丈夫です!」 「薬歴も、薬歴AIがあるから安心です!」 「調剤は、あまり知識のないスタッフ(?!)でも、ピッキングの補助アプリを使いながらやるので、こちらも気にしなくて大丈夫です!」
(※ちなみに私個人的には、確かに薬剤師ではないので、それを“知識がない”と言われたらそれまでですが、処方箋記載の用法・用量を全て1点ずつ確認しながら、入力を待たず先調剤します。ピッキング補助アプリの正しい使い方は、鑑査へ回す直前に「調剤した医薬品にミスがないか」スキャンで確認、その後「調剤した医薬品に漏れがないか」撮影目的のため使用。入社当時このようなアプリは存在しなかったですし、あくまでアプリ使用は最終確認・ミス回避が目的であると捉えています。)
まさか人事担当者は、これから薬局業界に向かって羽ばたこうとする若き薬学部生達にとって、このような売り文句が魅力的に映ると信じているのでしょうか…こんな説明を受けてしまった彼らからすると、「OCRも薬歴AIも導入されているし、ピッキングも、パートスタッフがアプリ使いながらやってくれるそうだから、私達はあまり気にしなくて良さそう!いま流行りのDXとやらが進んでいる会社だから、AIにお任せで楽かも?これは助かる~」なんて勘違い?まさかそんなことはあるまいと願いつつ、実際に“薬剤師の卵たち”の入社後、少なからず下記のような声を耳にするので、正直驚くことがあります。
●入力、やったことないです・・・
●加算、よくわからないです・・・
●調剤、計算が苦手なんです・・・
入社後1年以上経った状態でも、若手薬剤師からこんな声が漏れ聞こえてくると、「まさか、鑑査と投薬だけやってればいいと思ってる?」とつい言いたくなることも。他社様サービス含め、処方箋OCRも薬歴AIも、薬局業務効率向上を目的に開発されているので、確かに導入すれば、楽にはなるでしょう。しかし「AIにお任せしておけば、すべてバラ色」「AIありきで、脳みそはあまり使わない」と言わんばかりに、“薬剤師として日々学び続けよう” ”自分の頭で考えよう“という気持ちが後回しにされるのは、私達の望みではありません。あくまで我々がサポートすべきは、「手数(てかず)少なく/ミスなく/早く」入力や薬歴作成を完了させること。その結果、患者様をお待たせする時間を1秒でも短くすること。これを第一に、各種プロダクトの設計・開発を行っています。これから薬局業界へ向かって羽ばたいてゆく若き学生の皆さん、新人薬剤師の皆さん、AIを上手に使いこなしながら、自分なりの学びもぜひ続けて頂けると嬉しいです。もちろん私たち薬局スタッフも「スタッフ一人一人が学び続ける姿勢を持つことで、薬局現場をより良いものに」という思いのもと、働いていますので。
とはいえ本部やエリマネ層からは、人手不足を理由に、ついつい鑑査・投薬メインにされがちな新人薬剤師さんのお立場も、mediLabとしては理解しているつもりです。若いからこそ、あちこちの店舗にヘルプに駆り出される日々が続き、自店舗でじっくり働く機会に恵まれず、肝心の自店舗環境や人間関係に馴染む余裕がないといった声もよくお聞きします。私達mediLabは、そのような「新人薬剤師ならではのお悩み」にも耳を傾けますよ。
<2025.7.4>
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