mediLabコラム

薬が足りない!入らない!長引く出荷調整による医薬品不足問題を乗り切る

 一部の製薬会社による不適切な製造や品質管理不正をきっかけに始まったとされる医薬品出荷調整。その後コロナウイルス感染症流行をきっかけに、去痰薬、解熱鎮痛剤を中心にさらに多岐へと広がりを見せています。長引く出荷調整による医薬品不足問題は、今や一般消費者の間でもよく知られるようになり、調剤薬局では患者様ご自身が処方箋片手に「このお薬ありますか?」と、事前確認されることも少なくありません。mediLabメンバーでありながら、日ごろ調剤薬局で調剤補助スタッフとして働く私自身も「どこの薬局にも在庫がなく、何軒も探し回ってきた」と患者様よりお聞きし、何とかしたいと思うものの、お薬の内容によってはご用意できず、残念ながら処方箋受付をお断りせざるを得ない場面に何度も遭遇してきました。
 本来、調剤薬局が果たすべき役割は「患者様が必要とするお薬をできるだけ早く、確実にお渡しする」こと。では患者様にとって必要な薬が不足してしまった場合、どのように調達すればよいでしょうか。全国どこの薬局現場でも人手不足に悩む中、薬剤師やスタッフの皆さんは多忙な通常業務に加え、毎日のように医薬品不足問題と向き合い、不足薬調達に多くの時間を割いています。長引く出荷調整による医薬品不足問題を乗り切るために、調剤薬局として日頃から取り組むべきポイントについて、自身の薬局経験で得たことを含め、以下6点に沿ってお伝えしていきます。

執筆:mediLab広報・調剤補助C子<薬局あるある話>


出荷調整時に調剤薬局業務で気を付けるべき6つのポイント

【1】薬局スタッフ共有のポイント
【2】処方箋受付けのポイント
【3】医薬品発注のポイント
【4】処方箋入力のポイント
【5】調剤のポイント
【6】服薬フォローアップのポイント

【1】薬局スタッフ共有:「今日の入荷未定の薬は?」出荷調整最新情報は、薬局スタッフ全員で共有

 出荷調整中の医薬品情報は、日々刻々と変化し続けていることが特徴です。昨日まで普通に供給されていた薬が急に出荷停止になったかと思えば、先週までずっと入荷未定と聞いていた薬が突然入ってくることも。こうした不安定な医薬品供給事情は、薬局現場にとって非常にインパクトが大きいと言えます。調剤薬局としては、変化の著しい出荷調整最新情報をいかに正確に把握しておくかが、毎日の薬局業務のカギとなります。在庫不足により、処方された薬の一部しか患者様にお渡しできない場合、残りの不足薬がいつ入荷するのか、患者様にはいつ頃お届け可能なのかお伝えするためにも、出荷調整最新情報のキャッチアップを毎日怠らないようにしましょう。

 出荷調整に関する最新情報は、医薬品メーカーサイトのほか、薬剤師個人が開設するブログなど様々なサイトで公開されているようです。中でも、薬剤師有志数名により立ち上げられたDSJP|医療用医薬品供給状況データベースでは、限定出荷から供給停止、販売中止に関する情報が日々更新され、代替薬の検索なども可能となっています。その日の出荷調整最新情報をキャッチしたら、朝礼などの場を活用し、薬剤師だけでなく、処方箋入力・調剤すべてに関わる薬局スタッフ全員で共有しておくと、一日の薬局業務もスムーズになりそうです。

 特に、処方箋入力にかかわるスタッフさんにとっては「アモキシシリンは、今日はどのメーカーで入力すれば良いかしら?」「デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物錠は、まだメジコン錠で入力するのよね?」など気になることが盛りだくさん、処方箋入力のたび、悩みが尽きません。朝一番で情報共有したあと、午後からのシフト交替に伴いスタッフが入れ替わる場合は、さらにもう一度、スタッフ間で出荷調整最新情報を共有し直すと良いかもしれませんね。私の勤務先薬局ではノートを活用し、出荷調整に関する情報をはじめ、スタッフで共有しておきたい事項を記入しあい、出勤したら各自目を通すようにしています。

長引く出荷調整による医薬品不足問題を乗り切る

【2】処方箋受付け:処方箋を受け取ったら、まずは出荷調整の薬が含まれていないかサッと確認

 患者様の中には、いったん処方箋だけ預けて別の診療科受診に行かれたり、用事を済ませに外出したり、もしくは後日受け取りを希望して帰宅する方がいらっしゃいます。そんな時、お預かりした処方箋に在庫不足の薬が含まれていたら困りますよね。しばらく経ってから患者様が戻ってこられたとき「実は在庫不足のため、ご用意できませんでした」とお伝えするのは、必要な薬を少しでも早く受け取りたい患者様にとって、マイナスであるとしか言えません。
 私自身、勤務先の調剤薬局で苦い経験があります。まだ薬局スタッフ一同、それほど出荷調整問題に慣れていない頃、「これ、よろしくね!」の一言と共に、処方箋を預けたまま昼食に外出された患者様がいらっしゃいました。あいにく薬局の混雑時間帯だったため、他の処方箋の下に積み重ねられ、その方の処方箋内容確認が少し遅れてしまったのです。しばらくしてよくよく処方箋を見ると、そこには、まさかの出荷調整中の薬が数点含まれており、調剤できないことが判明、在庫がある他の近隣薬局にご案内しようと連絡するも、記載された連絡先はご自宅電話番号だったため、連絡がつかなかったのです。「そろそろ薬が用意されている頃かなぁ」と期待し、戻ってこられた患者様に事情説明の上お詫びし、近隣薬局へご案内しましたが、しばらくモヤモヤ感が残ったものです。以来、処方箋をお預かりした時点で必ず「ちょっとお待ちください!お薬の在庫を確認しますね」と、一声かけるようにしています。
 受け取った処方箋に出荷調整中の医薬品が一つでも含まれていたら、入力前のなるべく早めの段階で把握しておきたいですね。mediLabの「まもる君」は、受け取った処方箋に出荷調整中の医薬品が一つでも含まれていたら、処方箋OCR時点で「出荷調整中のため、在庫不足です!」とお知らせします。処方内容によっては全くお薬をご用意できないと判断したら、処方箋受付自体が難しい旨、患者様に早めにお伝えすることが可能となり、患者様へのご迷惑も最低限に抑えることができます。こうした入力前の処方箋確認は、特に新患来局時はことさら重要と言えるでしょう。新患用紙への記入後、ジェネリック可否を確認、患者様にお手間をかけて頂いたにもかかわらず、「在庫不足のため、お薬をご用意できません」と最終的に調剤をお断りするのは絶対避けたいものです。

長引く出荷調整による医薬品不足問題を乗り切る

【3】医薬品発注:メーカー、規格、剤形にこだわらず、入荷可能は医薬品から幅広く

「バラ錠なら入りそう」
「1,000錠1箱は厳しいけれど、100錠包装なら数箱入荷するかも」

など、出荷調整中とはいえ、発注形態によっては入荷可能な医薬品も意外とあったりするものです。医薬品発注にあたっては、従来メーカーのみにこだわらず、入荷可能なものがあれば、メーカー問わずに発注を試みると共に、先発/後発品の括りも外し、範囲を広げて発注することがポイントです。また同効成分で異なる剤形が存在する場合は、入荷しやすい剤形のものを中心に、普段より多めに発注しておくのがおすすめです。たとえば、顆粒のものが入荷未定もしくは出荷調整中であれば、代替品として同成分の錠剤やカプセルを発注するなど、工夫すると良いでしょう。
 卸業者とのコミュニケーションも欠かせません。オンライン発注に留まらず、日頃から少しでも会話を心掛け、卸ごとの医薬品供給状況や傾向を把握しておくと、いざという時、ちょっと厳しいかなぁという発注内容も通るかもしれません。また供給不安定な出荷調整医薬品については、メーカー名/規格/剤形など含め、他の近隣薬局でどれくらいの数量を持っているのか、ある程度把握しておくと、いざという時の不足薬小分け依頼もスムーズにできそうです。

長引く出荷調整による医薬品不足問題を乗り切る

【4】入力:採用薬をチェック!出荷調整中でも入力可能な医薬品、メーカー、規格を選択

 相次ぐ出荷調整により、薬局現場に混乱を招いている問題の一つが、頻繁に起こるメーカー切替わりや採用薬の一時変更です。特に入力スタッフにとっては、処方箋入力するたび、「この薬、しばらく出荷調整中と聞いたけれど、今回はどのメーカーを入力すべき?」「後発品は入荷未定のこの薬、今週も先発品で入力していいのよね?」等々、一つ一つ確認しながら入力画面と向き合わなくてはならず、心理的負荷が大きいと言えます。すぐ近くに薬剤師がいれば確認することも可能ですが、投薬中のタイミングや一人薬剤師の時間帯だったりすると聞くに聞けず、その間入力業務がストップしてしまい、患者様をお待たせしかねません。こうした状況を回避するためにも、その日の出荷調整最新情報を薬局スタッフ間で共有しておくことが必須です

 長らく出荷調整が続いている医薬品の代表的な例に、カルボシステイン錠があります。私の勤務先薬局では、特にカルボシステイン錠500㎎が供給不安定により一定数量の確保が難しく、90日分など長期処方で大量に出てしまうと、仮に入荷したとしてもあっという間に在庫不足となりがちです。こうしたケースを回避するため、カルボシステイン錠の処方がきたら、比較的入荷しやすい半分の規格量250㎎を倍量にて調剤・入力するようにしています。在庫に応じ、こうした臨機応変な入力が求められる医薬品については、ポストイットにメモしたものをレセコン画面横に貼り、常時入力スタッフの目につくようにしていますが、出荷調整に伴う変更が絶えない最近は、レセコン周りのポストイットが増える一方で、せっかく注意を促していても、薬局混雑時は処方箋入力業務への焦りからうっかり見落としてしまうこともあるようです。出荷調整中もしくは供給不安定な医薬品については、在庫があり入力可能なメーカー名をしっかり把握、たとえ入力者が誰にかわったとしても、迷うことなくスムーズに入力できることが重要なポイントです。

 従来採用してきたメーカーは出荷調整中であるが、代替品として一時的に別メーカーの同じ薬を採用中の場合は、そちらを選びましょう。出荷調整が解除されたら、従来からの採用メーカーを再び選択するよう、元に戻します。出荷調整により調剤できない薬や入荷未定のメーカー名を知らないまま、うっかり入力してしまうと、その後の入力手戻りや薬情、薬袋などの出し直しが発生、患者様をお待たせすることになります。出荷調整による医薬品不足が続く今、処方箋入力場面ではスタッフの迷いや混乱を招きがちですが、mediLabの「まもる君」は処方箋OCR時点で、入力すべきメーカー名、規格、剤形などを早めにお知らせすることでスタッフの心理的負担を軽減します。mediLabが考える「理想の入力」に基づき、出荷調整という困難に直面する中でも、初心者/ベテランなど経験にかかわらず、誰もが安心して入力業務に当たることができるようサポートします。

【5】調剤:在庫不足のお薬処方に出会ったら、調剤法、不足薬の調達法を薬剤師にすぐに確認

 出荷調整中の薬が処方箋に含まれていた場合、調剤上で気を付けたいポイントとは:
・医薬品名、メーカー名、規格、剤形はどれを選び、調剤するか
・在庫不足により全量調剤が難しい場合、どのくらいの量をいったん調剤すべきか
・一部しか調剤できなかった場合、残りの不足薬を後日お渡しできる見込みはあるか
・不足薬の調達法はどうするか

 たとえば整形外科による鎮痛剤処方としてカロナール錠がよく見られます。私の勤務先薬局では比較的、長期処方の患者様が多く、1日3錠×90日分といった処方が度々あり、患者様お一人で300錠近い量を出すことになります。カロナール錠は、今もなお供給不安定な医薬品の一つであり、卸業者による1ヶ月あたり入荷量がほぼ決められ、次回入荷未定と言われることが多いです。こうしたカロナール錠のようなケース同様、出荷調整中の医薬品の長期処方があって全量調剤することが厳しい場合は、患者様にお手持ちの残薬や服薬状況などを確認、一度に全量調剤する必要性があるかどうか見極めることも大切です。あとに続く患者様の処方量も見据え、状況に応じ全量ではなく一部のみをいったんお渡し、残りの不足薬については後日お渡しする判断も選択肢の一つです。

 不足薬の調達法も考えなくてはなりません。チェーン調剤薬局であれば、系列他店舗へ在庫確認の上、余裕があれば必要量を移動してもらいましょう。あわせて卸業者へも早めに入荷目処の確認・発注を行っておきます。患者様にお手持ちの薬が全くなかったり、今すぐ全量調剤する必要がある場合は、近隣薬局に在庫確認の上、不足薬の小分けを依頼、もしくは患者様受け入れ可能かどうか打診します。
 近隣薬局に患者様受け入れを打診・依頼するにあたっては、大抵どこの薬局でも処方箋記載の薬を1点1点、電話口で読み上げ、相手先薬局へ在庫確認する方法が主流かと思われます。実際、私も調剤困難な処方箋に出会うたび、近隣薬局への在庫確認や電話を繰り返してきました。こうした不足薬調達法は薬局業務の中でも大きな負荷となっており、「なんとかIT技術で解決できないものか」と、薬局の悩みとしてmediLab開発メンバーに伝えたところ誕生したのが、携帯端末用アプリ「Tonari SoS」です。不足薬を含んだ該当処方箋を撮影、画像(個人情報部を除く)を携帯端末上から送るだけで、瞬時に相手先薬局の患者様受け入れ可否を確認できるようになりました。出荷調整による医薬品不足問題が起こるたび、不足薬調達に多大な労力と時間を費やしてきた薬局現場にとって、いかに簡単に楽にスムーズに不足薬を調達できるかは、今もなお大きな課題です近隣薬局同士の助け合いが欠かせない今、お互いの在庫確認をスピーディーに行い、患者様のお手元に早く確実に「お薬と安心」をお届けできるようにしたいものですね。

【6】服薬フォローアップ:医薬品不足問題には変更調剤で。処方元への情報提供もしっかりと

 出荷調整の長期化に伴い、調剤薬局現場では、引き続き多くの医薬品が出荷調整や出荷停止などの供給不安にさらされる毎日です。これに対し、調剤薬局が処方薬の変更調剤を少しでも柔軟に行えるよう、国としての新たな対応も示されています。

主な内容としては、

・一般名処方による後発品処方で「変更不可」の記載がない場合、患者様の同意を得れば、先発品や剤形・規格が異なる他の後発品に変更可能。一般名処方から先発品への変更は認められない。
・患者様の同意を得れば、後発品への変更調剤で薬剤料が上がる場合や、類似剤形の範囲を超える剤形・規格変更も可能。

変更調剤が柔軟に行えるようになった一方、患者様の中には、長く服用してきた薬を変更したことをきっかけに体調に変化がみられた剤形変更により飲みづらさを感じる、以前の薬の方が良かったなどの声をお聞きすることもあります。薬剤師は、こうした患者様のお声を一つ一つ漏らさず確実に薬歴化すると共に、処方元医療機関への情報提供、患者様の服薬フォローアップなどを実施していきましょう。これらは従来も行ってきたかと思いますが、たとえば「Tonari SoS」のようなITツール導入により、薬局業務負担の一部を軽減させる一方で、患者様への説明やコミュニケーションに割く時間は充実させていきたいものですね。対人で豊かにすべき時間を維持するためにも、自分の薬局現場に適したIT技術導入により薬局DXを図ることは、人手不足に悩む薬局現場において、業務効率化を図る上で欠かせないものとなっています。

 出荷調整による医薬品不足問題は、この先もしばらく解消の目処が立たないと言われています。
長引く出荷調整に伴う医薬品不足問題をうまく乗り切りながら、毎日の調剤業務をしっかり行い、患者様に必要なお薬を早く確実にお届けすることが調剤薬局としての任務です。そのために、日々更新される出荷調整最新情報をしっかりチェック、自分の薬局では何の薬が不足しており、どの薬・メーカー・剤形・規格なら調剤可能であるか、常に把握しておきましょう。その上で、お預かりした処方箋に出荷調整中の薬が含まれていないかその場ですぐ確認、もし出荷調整中の薬が含まれていたら不足薬をどう調達するか、この問題解決に向けスピーディーに動くことが求められます。mediLabの「まもる君」は、処方箋お預かり後、処方箋OCR時点で「出荷調整中の薬が含まれていないか。もし含まれていたら、どの薬を調剤入力すべきか」、薬局業務に特化したAIがチェックし、入力スタッフへお知らせします。処方箋OCR後のAIチェックにより、早めの時点で薬局で働く皆さんへのお知らせが可能となり、出荷調整による医薬品不足問題にも慌てず対応できるようお手伝いします。

調剤入力支援AI
「まもる君」